成功と失敗との分かれ道は?

参考記事にもありますが、失敗するケースと成功するケースの最も大きな違いを一言で表すと、

「システムの製造前に充分な検討がなされているかどうか」です。

この「充分な検討」は、大きく二つに分ける事ができます。

一つ目は「目的の検討」です。
システム導入後に期待する「戦略」「収益」「業務改善」など、大きな視点での「目的」の検討を指します。

二つ目は「仕様の検討」です。
「必要な機能」「使い方」「デザイン」「品質」など、システムに求める仕様の細かな検討を指します。

大規模なシステム(例えばいろいろな立場の人が利用したり、経営戦略に関係するようなシステム)の導入では特に「目的の検討」が重要となり、その検討がクリアできてはじめて二つ目の「仕様の検討」を詰めていく事ができます。

これら2種類の検討が混在したり順序が逆になってしまうと、いつまで経っても話しが纏まらなくなってしまいます。システム化プロジェクトに関わった方には多少なりとも身に覚えがあるはずです。

また、時間が無いからといって検討が纏まらないうちに製造を急いでしまうと、できあがる頃に「こんなはずでは...」といった問題が噴出してくることになります。

これはWebサイトを構築する場合も同様です。単純に会社パンフレットの代わりとしてだけのホームページを作るのでしたら全てサービスベンダー任せでもそこそこのものは出来上がります。しかし、Webサイトで何らかの効果をあげたいのであれば、「目的の設定」「何を一番伝えたいか」「誰に読んで頂きたいのか」「読まれた後にどのようなアクションを期待するのか」などを予め検討しておかなければ基本構成やデザインですら決める事ができません。

今お読み頂いているこのサイトは次のような明確な目的があります。
それは「あまり広まっていないシステム開発の進め方の説明を全て読んで頂き、その必要性を感じた方から当社へご相談頂く」というものです。
そのため、一般的な企業サイトと異なる独特の構成を取り、重要でない情報やリンクは極力つけないようにしています。

このように情報システムは「目的によって仕様や仕組みが決定する」という考え方が基本となります。

小規模なシステム(単一業務の改善目的や、利用者の種類が少ないシステム)の場合は「仕様の検討」のウェイトが重くなりますが、それでも目的の検討無しに仕様の検討に入ってしまうとシステムができ上がるにつれ「アレもできた方がいい、コレもできた方がいい」といった追加要求が湧き出てきます。
目的がぼやけていると、一体どこまでを実現すれば良いのか歯止めが効かなくなってしまうのです。

そうなると発注者とベンダー間の綱引きが始まり、「言った、言わない」の交渉に無駄な時間と労力・精神力を費やさなければならなくなります。
最悪の場合、本当に必要な大きな目的に後から気付き、スケジュールや予算の都合上システム化しきれなくなることも多々あります。

こうして発注者は「不完全なシステムを作られた」と言い、ベンダーは「不当な追加要求を受けた」といった、システム化でよくありがちな「要求が膨らみすぎて収集がつかなくなる」といった結果に陥ってしまいます。

繰り返しますが例え小規模なシステムや新しいシステムへのリニューアルであっても「予め目的を決めておく」ことで「要求の漏れを防ぐ」と共に「要求の範囲を確定」しておくことがとても重要です。

要件定義 RFP